リードナーチャリングという言葉をご存知でしょうか?
ビジネスシーンにおいて聞かれる場面も多くなってきましたが、意味をよく知らない、どのような手法なのか分からないという方がいらっしゃるかと思います。
リードナーチャリングは『見込み顧客の育成』のことを指し、アメリカで生まれたマーケティングの1つになります。市場の変化から新規顧客開拓の困難さや負荷から既存顧客との関係性構築を重要視する企業が増え、このような考え方が広がりました。
今回はリードナーチャリングに関して、手法の種類や取り組み方、支えるツールについて解説していきます。
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目次
- リードナーチャリングを知るための3ステップ
- リードナーチャリングが注目されている背景
- リードナーチャリングを行うメリット
- リードナーチャリングの手法
- リードナーチャリングの取り組み方
- リードナーチャリングを支えるツール
- リードナーチャリングの活用事例
- まとめ
リードナーチャリングを知るための3ステップ
リードナーチャリングには、前後にプロセスがありその内容を知ることでよりリードナーチャリングについて理解が深まります。
ここでは、3ステップに分け解説していきます。
1.リードジェネレーション(見込み顧客の獲得)
リードナーチャリングの前段階として、リードジェネレーションがあります。これは、自社の顧客になる可能性のある見込み客(=リード)を獲得するための施策のことを指します。
イベントやセミナーのアンケート、メルマガの配信などによって見込み客を獲得します。
2.リードナーチャリング(見込み顧客の育成)
リードナーチャリングとは、見込み客を育成することを指します。
ステップ1によって獲得した見込み客に対し、継続的に関係性を構築していき、自社製品・サービスへの理解、自社ブランドのファン化を促し購買欲を高め優良顧客へと育成していきます。
一度優良顧客になると、一度きりの取引だけでなく、リピート購入に期待でき長期に渡って安定的な利益をもたらす可能性があります。
3.リードクオリフィケーション(見込み顧客の抽出)
リードクオリフィケーションとは、顧客を層別することを指します。
リードナーチャリングによって育成した優良顧客をメールの開封率など目に見える形で顧客のアクションを数値化し、より購入意欲が高い顧客を層別します。
このように優先順位を決めておくと受注確度が高い顧客が判明するのでターゲット選定が容易でセールス部門もロスなくプロモーションを行うことが出来ます。
リードナーチャリングが注目されている背景
リードナーチャリングはアメリカ発祥のマーケティング手法ですが、近年日本でもビジネス現場で使われる機会が増え注目されています。
なぜ注目されつつあるのか?以下3点に絞って解説します。
顧客の購買行動の変化
これまでは訪問販売や飛び込み営業などによって、顧客とコミュニケーションを取り商談の成立や購入といったプロセスをしていました。
現在はITやインターネットの発達によって、顧客自らが情報収集し前提となる情報を持ったまま商品・サービスを検討しています。訪問した時には検討段階は終了し既に購入を決定、または他の競合に取られ空振りに終わることも少なくないと思います。
そのため出来るだけ早期に顧客と接点を持ち、自社との関係性構築を推し進めなければいけません。
リードの購買プロセスの厳格化、長期化
顧客の購買行動の変化に合わせて、検討時間が伸びたことにより購入プロセスの長期化も要因としてあります。
BtoB企業の場合、扱う商材の単価が大きい場合が多く、購入に至るまでの意思決定に複数の人間が関わり、決裁のステップも多くなります。また、市場の変化によりニーズが複雑化している現代において、1つの決裁に対する責任が重くなっている傾向があります。そのような決裁の厳格化も背景にあると考えられます。
休眠顧客の増加
休眠顧客とは、過去に購入・取引があったが現在は取引がない顧客のことを指します。
継続したアプローチを取らずそのまま放置しているために休眠顧客になっている可能性もあります。過去に取引があったということは、ある程度商品知識があったり顧客情報を理解している状態です。
適切なコミュニケーションを継続すると、再度優良顧客になる見込みがありますのでリードナーチャリングが有効に働きます。
リードナーチャリングを行うメリット
このような背景からリードナーチャリングを行うメリットについて3点解説します。
新規顧客獲得の負担が減る
リードナーチャリングは獲得したリードとの関係性構築により売上を拡大していく方法です。
新規顧客獲得には多くのリソースを割かなければなりません。ビジネスシーンでは『5:1の法則』と呼ばれるものがあり、新規顧客獲得は既存顧客の5倍コストが掛かると言われています。
現在では連絡・伝達手段の発達により既存顧客とのコミュニケーションが容易になっているため、営業が足で稼ぐなどといったコストを抑えることが可能です。このような費用対効果の大きさが1つのメリットになります。
LTVの向上が見込める
LTVとは『顧客生涯価値』と言われ、顧客が生涯においてもたらす利益のことを指します。
企業が成長をするためには、長期的に安定的な利益が必要です。リードナーチャリングによって優良になった顧客は確度の高いターゲットとなっていますので、アプローチし続けることで長期に渡り取引・購入する可能性が高くなります。
このようにLTVを向上していくことが企業において不可欠ですので、リードナーチャリングは有効的な方法と言えるでしょう。
関連記事紹介
以下はLTVについて詳細解説している記事になります。LTVが重要視されている背景や向上方法などを解説していますので、参考にご覧下さい。
効率的に行える手法が豊富
IT・インターネットの発達により、コミュニケーション手段が増えたことも要因としてあります。
ツールを使う必要がありますが、顧客心理や顧客の反応をグラフや数値などで可視化することが出来ますので、ニーズを深堀りすることが出来ます。
潜在的なニーズから顧客が必要だと感じたタイミングでアプローチをかけることができますので、何度も顧客にテレアポしたり直接出向いたりといったセールス行動のムダを省くことが出来ます。また、メールやスカイプ、SNSなど連絡手段も豊富に誕生したので、従来より時間もコストも抑え受注や購入に繋げれますのでその点もメリットと言えます。
リードナーチャリングの手法
ここからは具体的にリードナーチャリングの手法をご紹介します。
メールマーケティング
メールは、広く使われている代表的な手法です。メール配信(メルマガ)によって、関心を促し購入に繋げます。
以下、メールマーケティングで使われる手法を2つ紹介します。
セグメントメール
セグメントメールとは、年齢・職業などで顧客の属性を絞り込みターゲット選定した上でアプローチする手法になります。ターゲット毎に適した情報を配信する必要があるので、属性を深堀りし精度を高めましょう。
ステップメール
ステップメールとは、顧客に対し段階的に情報を配信する手法になります。見込み客に対し商品情報を送り、次の商品の使用方法を配信するなど情報を段階的に送ることで購買意欲を高める方法になります。
関連記事紹介
メールマーケティングについては以下の記事で方法、取り組み方などを説明しています。
Webコンテンツ
Webコンテンツとは、動画配信やオーディオブック、オウンドメディアなどが挙げられます。
質の良いコンテンツを作成することで、顧客と信頼関係を構築しファンとして育てていくコンテンツマーケティング手法の1つです。
オウンドメディアとは自社運営のブログのようなもので、多岐に渡る情報配信が出来るのでファン化と商品販売が出来るので相性が良いところがメリットになります。ただ短期で結果を出すものではなく、長期的な視点を持ち質の高い情報を作り込む必要があります。
SNS
SNSを使ったマーケティングは、現代社会において知っておくべき手法になります。
Twitter、Instagram、LINEなどは、国内アクティブ率が高く使用頻度が多いSNSになります。
それだけリード獲得の機会が多いので、ファン化と顧客ロイヤリティの向上が見込まれます。
ただしWebコンテンツ同様、長期的な戦略が必要ですので継続性が大事になります。
以下記事にて、最近主流になりつつあるLINEマーケティングについて解説してます。
セミナー・イベント
セミナー・イベントも代表的な手法で、多くの企業が活用しています。
対面でのコミュニケーションが特徴的で、ダイレクトに情報を発信できるのでより購入意欲を高めることが出来ます。
最近ではオンラインを使ったセミナーなどもあり、インターネットと併用した費用対効果が大きい施策も行っているところがあります。SNS、Webコンテンツとも相性が良いので相乗効果を狙え効率が良いリードナーチャリングの手法になります。
リードナーチャリングの取り組み方
手法が理解できたところで、実際に始める際の取り組み方について解説します。
情報の集約・一元化
最初の取り組み方として、点在している顧客情報を集約し一箇所で管理しましょう。
セミナーやイベントで獲得した名刺や取引先情報、メールアドレス、SNSのフォロワーなど多種多様の情報があると思います。
また、営業の担当者が個人で管理しているPCやデスク内の情報、部門単位で管理しているキャビネットに保管されている情報など、企業には複数の場所に情報が点在しています。スムーズに行うためにも、それらを集約し一元管理することが最初の一歩としては重要になります。
顧客情報の層別
次に集約した情報を元に顧客を層別します。
年齢、性別、職業、趣味、嗜好品などの『顧客属性』を元に層別を行います。また、セミナーで得た顧客なのか、SNSから獲得したリードなのかといった行動によっても顧客ニーズは変化しますので、いかにして情報を得たのかという動線の情報も無視してはいけません。
現代社会におけるニーズは複雑化していますので、細かく情報を確認しながら適切な層別を行いましょう。
ターゲットの選定
顧客の層別が完了すれば、ターゲットの選定に移ります。
自社製品やサービスがどこのセグメントに効果があるのか優先順位付けを行う必要があります。ミスマッチがあれば、効果が期待できませんので、売上向上が望めません。
自社の課題や層別した際の情報からニーズを深堀りし、適したターゲットを選定しましょう。
最適なアプローチ
ターゲットが決まれば、最後にアプローチの段階に入ります。ここまでの情報で顧客が持つ悩みやニーズがある程度可視化出来ていると思います。
あとは一番効果的なアプローチ方法が何か検討しましょう。従来の手法を持つ企業なら、営業部門などと連携を取り想定されるターゲットを優先的にアプローチしたり、配信する情報を最適な形に加工したりと改善することが出来ます。
またリードナーチャリングは長期的な戦略が必要ですので、アプローチ方法も単発で終わらすのではなく、継続性をもたせた手法にしましょう。
リードナーチャリングを支えるツール
ここでは、リードナーチャリングを有効的に活用するためのツールを紹介します。
メール配信ツール
メール配信ツールはメールマーケティングを効率的に行うためのツールになります。
ユーザーリストの作成や、アクションの解析、配信の自動化などを行うことが出来ます。その他にも予約配信機能や開封率などをスコアリングしグラフ化する機能などもあり、種類は豊富です。
少なからず費用はかかりますが、メールマーケティングには地道な作業が必要になりますので、コストと作業負荷のバランスを見て検討しましょう。
CRMツール
CRMツールは、顧客管理ツールと呼ばれ顧客情報の管理に特化したツールになります。
マーケティング作業全般の作業効率化や自動化に適し、顧客情報のデータベース化や情報分析、プロモーションのプロセス管理などが行なえます。
CRMツールは様々な企業が提供しており、無料でお試し出来るツールもありますので使用感を試した上で、自社に適したCRMツールを選びリードナーチャリングを効率よく行いましょう。
リードナーチャリングの活用事例
では実際にリードナーチャリングを活用した成功事例についてご紹介します。
日本電気株式会社(NEC)
NECは製造業の顧客を対象とした自社サービス拡販のため、リードナーチャリング施策を行いました。
これまでは問い合わせのある無しによって顧客のアクションを測っていたわけですが、あまり効果的に感じず課題を感じていました。
そこで、メール配信を通じて自社サービスの情報を配信したところ、製造業のマーケティングにおける有効性を認知してもらうことが出来ました。その反応をフィードバックしてもらうことで顧客の興味関心を理解し潜在的なニーズを掘り起こすことに成功しました。その結果、確度の高い顧客に対し効果的なアプローチが出来るようになりました。
株式会社マックスプロデュース
マックスプロデュースは、イベントの企画やプロデュースを行っている企業になります。
顧客ニーズがなかなかつかめず新規顧客開拓に課題を感じていました。そこで自社でオウンドメディアを立ち上げ、実際のイベントやプロデュース内容を発信するとともに会場リストやサンプルなどを無料ダウンロードできるようにしました。
視覚的に分かりやすく価値ある体験を提供するというコンテンツの作り込みによって、見込み顧客に対する認知度を上げる戦略を取っています。
またダウンロードの際には、メールアドレスや会社名、担当者名を入力するようにフォーム化され、訪れた顧客の情報獲得にもつなげるという有効的な戦略も成功している点と言えます。
SAP社
SAP社はBtoB向けのソフトウェアを提供している企業になります。
継続的なコミュニケーション手段として、自社サービスを導入した企業の事例を一般共有するイベントを開催しています。その中では、顧客へインタビューを行いソフトウェアの有用性をヒアリングしたり、双方向のチャットより参加企業からの質疑応答を行っています。
このイベントは録画もしており、ウェブサイト上のアーカイブから閲覧することも可能になっています。
このイベントのように、顧客が具体的に使用感をイメージでき、生の声から購入意欲を高めるので効果的な戦略と言えます。
実際に700社以上の参加者を獲得するなど売上にも貢献しており、リードナーチャリングを上手く活用した成功事例と言えます。
まとめ
今回は、リードナーチャリングについて解説してきました。
市況の変化から新規顧客開拓が難しくなり、既存顧客に対する関係性構築からリードナーチャリングの考え方は重要視されています。
また、インターネットの発達から今までより手法が低コストで行えることから費用対効果が高く様々な企業が運用に乗り出しています。自社においてマーケティング、セールスに課題を感じている方がいらっしゃいましたらリードナーチャリングを検討してみてはいかがでしょうか?その際にはこちらの記事を参考にしていただければ幸いです。