顧客ロイヤルティとは。基本知識とロイヤルティ向上のポイントを解説

2022/05/13

商品の品質は同じものような物が多くある中、あえて特定のブランドを選ぶ顧客が一定数存在します。

中には類似品であればもっと安く購入できるのに、あるブランドの商品をこだわって購入する人もいます。

このような顧客層を企業では「顧客ロイヤルティが高い顧客」と呼び重要視しています。

何となく「お得意様だから」というイメージで理解はできても、どうして重要視されているのかまでは具体的にはわからないビジネスマンもまだまだ多いかと思われます。

この記事では顧客のロイヤルティの基本知識とどうすれば顧客ロイヤルティをあげることができるのかというポイントを解説します。

これからのビジネスで自社の顧客ロイヤルティを高めたい、仕事をするうえで基本知識を押さえておきたいという方への参考になれば幸いです。

顧客ロイヤルティとは

顧客ロイヤルティとは、自社の商品やサービスに関して顧客が強い「愛着」や「信頼」を抱くことです。

ロイヤリティは直訳すると「忠誠心」という意味になりますが、この場合は「ファンになる」「贔屓にする」といった意味合いで使われます。

ロイヤルティが高い顧客は「ロイヤルカスタマー」と呼ばれ、企業への貢献度が高い傾向にあるため重要度の高い顧客として扱われます。

心理ロイヤルティと行動ロイヤルティ

顧客ロイヤルティには2種類あり、内容が少し違います。

  • >心理ロイヤルティ
  • 行動ロイヤルティ

 

心理ロイヤルティ

商品・サービスについて愛着や信頼を感じている状態のことを指します。

心理ロイヤルティが高いと商品の品質や価格に左右されにくい特徴があります。

しかし、信頼を裏切ってしまうと一気に顧客ロイヤルティが低下する原因になる為注意が必要です。

心理ロイヤルティは以下の4つで構成されます。

  • 顧客満足:このブランドはサービスが良い
  • 相違性:このブランドは他とは違う
  • 顕在性:この商品といったらこのブランド
  • 自己・ブランド連結性:私の好みとブランドのイメージが合っている

行動ロイヤルティ

商品・サービスを継続的に利用している状態のことを指します。

これは他人にブランドを勧めている状態も含まれます。

行動ロイヤルティは以下の4つで構成されます。

  • スイッチングコスト:別の商品に乗り換える時に感じるハードルの高さ
  • バラエティ/シーキング:いつも同じだから、たまには別のものも使ってみよう
  • 習慣的行動:いつも利用しているから
  • 立地利便性:家から近いから使いやすい

なぜ重要視されているのか

顧客ロイヤルティという用語が企業から注目を浴びるようになった理由は主に2つ挙げられます。

  • 顧客満足度を上げるだけでは次の収益に繋がらない
  • 新規顧客の獲得が難しくなった

顧客満足度を上げるだけでは次の収益に繋がらない

マーケティングでは「顧客満足度」という考え方が主流でした。

顧客満足度とは、顧客が商品を購入した際にどれくらい満足しているかという感情を重視した考え方です。

この感情を数値化して、売り上げ等の数字以外の情報から顧客ニーズを理解しようとしました。

この考え方によりリピーターの向上や口コミによる拡散といったメリットが発生し、企業では顧客満足度を評価する指標としてアンケート等の顧客満足度調査が実施されるようになりました。

しかし、この考え方が普及されてから新たな課題が指摘されるようになりました。

商品やサービスに関しては満足度が高くても継続的に商品を購入してくれない顧客が出てきたのです。

原因は「購入後のサポート窓口の対応が悪かった」「購入してから届くまでに時間がかかった」等の商品自体は良かったけれどその他のサービスに不満があったことでした。

このように商品に対する満足度が高いから次回も買ってくれるとは限らないという課題が見えてきました。

新規顧客の獲得が難しくなった

近年、新規顧客の獲得はコストがかかるようになりました。

これは高品質な商品を提供するだけでは競合他社との差別化が難しくなってきたことで、新規顧客の獲得にかかる広告費などのコストが高くなったことが原因といわれています。

さらに「1:5の法則」というマーケティング用語があり、新規顧客の獲得は既存顧客の5倍のコストがかかるといわれています。

これらの理由から、ビジネスで収益を上げる為には新規顧客の獲得よりも既存顧客との取引を継続するために良好な関係性を構築することへコストを割いた方が効率的と判断されるようになりました。

 

これらの2つの理由から買い物をした時の満足度ではなく愛着や信頼を感じて商品を購入してもらう顧客ロイヤルティという考え方が注目されるようになりました。

ブランドのファンになってもらうことでリピーターになってくれる可能性が高くなり、好きなブランドで身の回りの物をそろえようとする傾向からクロスセルやアップセルに繋がりやすくなります。

顧客満足度を上げることよりも継続的な収益を上げやすいということからマーケティングの視点からでも重要なポイントとして注目されるようになりました。

顧客満足度との違い

顧客満足度と顧客ロイヤルティの違いは以下のようにまとめられます。

  • 顧客満足度は顧客が商品に対して満足したかという点を重視している
  • 顧客ロイヤルティは商品に対して顧客は愛着や信頼を持っているかという点を重視している。

この2つはどちらもリピーターの獲得に繋げたいという企業の目的があって導入されているものですが、よりリピーターに直結するのは顧客ロイヤルティといわれています。

顧客満足度の調査結果によると商品・サービスに対する満足度が高くてもサポート体制や決済方法が不便という声が上がると再度商品を購入される可能性は下がります。

また一度の買い物での満足度が高くても、一時的な評価で終わってしまい印象に残らないこともあります。

これでは自社のブランドまでは浸透せず他社へ流れてしまう可能性があり、リピーターに繋がる保証はありません。

顧客ロイヤルティが高いと、顧客は自社ブランドのファンになってくれることが多く競合他社より優先して自社の商品を購入してくれる傾向にあります。

以上の理由から顧客満足度を上げただけでは他の要因でリピーターに繋がらない可能性があるのに対して、顧客ロイヤルティを上げると顧客から自社の商品を選択する可能性が高くなるという点が違いといえます。

顧客ロイヤルティのメリット

顧客ロイヤルティを上げることで得られるメリットは3つあります。

  • リピーターになりやすい
  • 顧客単価が上がりやすい
  • 顧客から自社ブランドを宣伝してくれる

リピーターになりやすい

顧客ロイヤルティが高い顧客はそうでない顧客と比較すると利用回数が多い傾向にあります。

さらにサブスクリプションの場合は解約率低下にも影響するといわれています。

これは、他社の類似商品があったとしても価格や機能面以外で「ここのブランドの方が安心できる」といった理由で差別化を図れるからです。

サブスクリプションにおいては「このブランドが好きだから」という理由で他社への乗り換えリスクを軽減させ契約を更新しやすくなります。

顧客単価が上がりやすい

自社のブランドが気に入られファンになってもらえれば同じブランドで揃えたくなる心理が働き、関連商品やより高品質な商品を購入する可能性が高くなります。

さらに定期的にDMで情報発信をすれば購入頻度も高くなることが期待できます。

これによりクロスセルやアップセルに繋げることで継続的な収益を上げることが可能となります。

顧客から自社ブランドを宣伝してくれる

顧客ロイヤルティが高いと企業とは別に顧客自身から積極的に自社ブランドをすすめてくれます。

SNSを介して商品の口コミやレビューを拡散してくれたり、周囲の友人や家族に対して自社ブランドの商品をすすめてくれたりしてくれます。

この結果、さらにファンが増えてまた拡散してくれるといった波及効果が期待できます。

このような広告効果だけでなく、ファンとなった顧客から「もっとこうしてほしい」といった意見を取り入れることでより品質の高い商品やサービスを提供するアイデアのきっかけになることもあります。

顧客ロイヤルティの上げ方

顧客ロイヤルティを上げることで継続的な収益を得られやすいこと、顧客満足度のみでは新規顧客の獲得やリピートが難しいことを知りました。

次に顧客ロイヤルティを上げるには具体的には何をすべきなのかを解説します。

自社の現状を把握する

顧客ロイヤルティは評価する為の4つの指標があります。

顧客ロイヤルティ4つの指標
  • 顧客満足度
  • NPS
  • 継続利用意向
  • LTV

そして顧客ロイヤルティを上げるには、自社の顧客ロイヤルティはどの程度なのかを知る必要があります。

顧客満足度

今までの解説で顧客満足度はリピート獲得に直結するものではないと説明しましたが、商品やサービスへの満足度が高ければ顧客ロイヤルティは上がりやすいという側面もあります。

顧客満足度は商品やサービスを購入・利用する前に抱く「期待値」と購入・利用後に感じる「満足度」の差で算出します。

商品以外の項目は評価できないためサポート体制が整っていないといった商品以外の理由で顧客が離れるリスクもあるので他の評価項目と合わせる必要があります。

NPS

NPSは「ネットプロモータースコア」の略称です。

顧客が商品・サービスに満足しているだけでなく「他人にもすすめたいか」を評価します。

10点満点で評価し点数に応じて「批判者」「中立者」「推奨者」とカテゴリー分けをします。

推奨者の割合からさらに批判者の割合を引いた数値で最終的な評価をします。

カテゴリー別の特徴は以下になります。

批判者:NPSが0~6点

中立者:NPSが7~8点

推奨者:NPSが9~10点

NPSは行動ロイヤルティを評価できますが心理ロイヤルティは評価できないので注意が必要です。

継続利用意向

継続利用意向とはこのまま商品・サービスを引き続き利用したいかという意向のことです。

リピート率や解約率に影響を与えます。

継続利用意向が低いと行動ロイヤルティが低い可能性が考えられます。

LTV

ライフタイムバリューの略称です。

生涯的に顧客が企業にもたらしてくれる利益のことを指します。

購買頻度や金額を分析することで行動ロイヤルティを把握することができます。

 

顧客ロイヤルティを知る為には上記のような複数の指標を評価・分析して自社の状態を検証することが重要です。

顧客ロイヤルティを上げる為の方法

顧客ロイヤルティを向上させる為には3つの段階を踏む必要があります。

  • 情報収集と現状把握
  • 分析
  • 改善施策

情報収集と現状把握

4つの指標を基に出来るだけ多くの顧客情報を集めます。

顧客ロイヤルティは心理的な問題が含まれるのでアンケートなどの顧客の声を実際に聞くことも重要です。

SNSなども活用すると企業側からは見えてこない顧客目線でのニーズが見えてくることもあり有効です。

これらの情報から以下のような必要なデータをまとめます。

  • 顧客ロイヤリティの高い人と低い人との違いを知る
  • 顧客ロイヤリティが低い人達の傾向を知る(性別・年齢・商品の満足度・購入プロセスの満足度)
  • 顧客ロイヤリティが高い人達の傾向を知る

以上の内容をまとめると次のステップに進みやすいです。

分析

顧客ロイヤリティを高くするだけでなく企業にとって収益に繋げる為に必要な課題を算出します。

企業にとって改善すべき内容は変わる為、上記で把握した現状から最も効率よく収益に繋がる課題を見出すことが重要です。

改善施策

CX(カスタマーエクスペリエンス)という概念があります。

これは「顧客体験」という意味で、顧客が商品を購入するまでの一連の流れのことを指します。

購入前のWebサイトや広告での印象から購入後のアフターサポートの満足度まで含まれており、この流れの中で自社にとって最も重要な改善点を優先して取り組むことで効率的に顧客ロイヤルティを上げることができます。

特定の顧客にフォーカスしたアプローチを行い、修正と改善を繰り返すとより効果的です。

顧客ロイヤルティが低下する要因

最も顧客ロイヤリティが低下する要因は顧客の信頼を下げることです。

顧客ロイヤリティは心理的な側面が強く影響を与えます。

具体的には以下のようなことをすると顧客ロイヤリティが下がる傾向にあります。

顧客ロイヤルティを下げる要因
  • 商品を偽装する/誤った情報を発信する
  • 問い合わせでの回答が不適切/回答が遅い
  • 顧客目線での対応ができない

例え悪気はなかったとしても顧客が一度信用を落とすと挽回することは困難です。

SNSの普及ですぐにネガティブな情報は拡散されてしまう為、顧客目線での誠実な対応を心がけることが一番のリスク管理といえます。

まとめ

顧客ロイヤリティは継続的に収益を上げるうえで重要な要素です。

顧客ロイヤリティを上げる為には顧客の声に耳を傾けるだけでなく、具体的に数値化して現状を細かく把握することが重要です。

自社にとって優先して改善すべき課題を明確にして効率的に改善施策を繰り返すことで顧客ロイヤルティは向上します。

地道な情報収集と分析、改善施策を繰り返してロイヤルカスタマーを育てることが企業と顧客双方での利益に繋がります。