DtoCまたはD2Cという言葉を耳にしたことはありませんか?EC運営に関わっている方であれば、一度は聞いたことがある言葉ではないでしょうか。
DtoCは2000年代の後半から伸びてきたビジネスモデルで、インターネットの普及やEC市場の拡大によって需要が急激に伸びています。アメリカのスタートアップ企業が始め、大成功を収めた新しいビジネスモデルです。
従来の販売方法と比べどこが違うのか、取り組むことによってどのようなメリットがあるのか、気になる方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、DtoCとは何かを基礎からわかりやすく解説し、成功するためのポイントやメリットデメリット、国内外の成功事例などを紹介します。
DtoCとは?
DtoCとは、「DIrect to Consumer」の略で、自ら企画から製造までした商品をどこの店舗も通さず自社のECサイトにおいて直接ユーザーに販売するビジネスモデルです。「D2C」と表記することもあります。
DtoCを取り入れるとメーカーとエンドユーザーとの関わりが増え、メーカーに直接ファンを付けられます。DtoCは特に店頭販売が中心だったアパレル・美容・食品などの業界で始まり、ほとんどの場合そのまま実店舗にてDtoC事業を行いました。しかし現在ではより簡単にユーザーとの接点をもつ手段としてECサイトが利用されています。
DtoCとBtoCの違い
DtoCと似た言葉で「BtoC」があります。これは、「Business to Consumer」の略で主にスーパーやコンビニをはじめとする小売店が、商品やサービスを一般消費者に提供するビジネスモデルです。
これらの小売店は、自社で商品を製造しているのではなく、メーカーから仕入れた商品を販売する形です。つまり、商品を製造してから顧客に渡るまでに中間業者が入っているかという点に違いがあります。
DtoCはなぜ今注目されているのか
なぜ今DtoCが注目されているのでしょう?以下の点が理由として考えられます。
- SNSの浸透
- サブスクリプションの台頭
- 大手ECモールの拡大
詳しく解説していきます。
SNSが普及したため
これまでのビジネスモデルでは、メーカーやブランドが自社商品の認知度を上げるためには、テレビCMを流し、大掛かりなプロモーションを展開するなど莫大な費用がかかっていました。また、小売店に自社商品を並べてもらうための「棚の取り合い」が起こるので、流入経路を開拓するために多くの営業マンも必要でした。
しかし、インターネットが普及し、SNSが市民権を獲得したことで大きく風向きが変わってきました。SNSを通じて、メーカーが消費者と直接コミュニケーションを取れるようになり信頼関係の構築やマーケティングも可能になったのです。
サブスクリプションの普及
サブスクリプションとは定額料金を支払うと一定期間商品やサービスを利用できるビジネスモデルです。このサブスクリプションの広まりがありDtoCが注目をされるようになりました。
サブスクリプション型のビジネスモデルの特徴は、消費者の囲い込みが可能な点です。そのため、長期的に利益を生み出すことが期待できるのです。その結果、DtoCとサブスクリプションを組み合わせたサービスを展開する企業が増えています。
ECモールの拡大
DtoCが生まれたバッググラウンドには、Amazonなどの大手ECモールの拡大も大きく影響しています。アメリカでのAmazonのシェアは日本よりも大きく、その影響で小売店や量販店が廃業に追い込まれるほどです。
そのことに危機意識を抱いた各メーカーが、小売店や量販店での従来のビジネスからの変革を目指し、メーカーが独自に販路を拡大するための施策としてDtocが採用されたのです。
DtoCのメリット・デメリット
メーカーがDtocに取り組む上でよい面はもちろんたくさんありますが、一方でよくない面もあります。ここからはメーカーがDtoCに取り組む上でのメリットとデメリットについて詳しく解説いたします。
DtoCのメリット
メーカがDtoCに取り組むメリットとしては、以下の5点が挙げられます。
- コストの削減
- 自由にマーケティングやキャンペーンができる
- 顧客情報の収集と蓄積ができる
- ブランドイメージの発信ができる
- 顧客との関係強化
詳しく見ていきましょう。
コストの削減
Dtocのメリットとしてまず挙げられるのが、中間マージンや手数料などの諸経費をカットできる点です。これは大きなメリットで、例えば、Amazonで「大口出品プラン」で出品した場合、月々4,900円の登録料と購入代金の約8〜15%がマージンとして発生します。
自社でECサイトを持てば当然そのような中間マージンは発生しません。しかし、完全に無料というわけではなく、外部の決済サービスを導入すれば決済手数料やサーバー費用はかかります。
それでも、中間マージンや手数料がカットできれば、自社サイトでは販売価格を抑えることが可能になるので、より多くの顧客からの購入が期待できます。
自由にマーケティングやキャンペーンを行える
自社のECサイト内の取引であれば、特に制約もないので、独自のマーケティングやキャンペーンを行える点もメリットです。
インフルエンサーやアンバサダーを起用して行うマーケティングは、DtoCの環境を整えた上で行われることが多く、幅広い施策が行えます。代表的な施策としては、SEOやSEMをはじめとして、ディスプレイ広告、アフィリエイト、メルマガなどがあります。
トレンド性の高い施策にすぐに着手できるのもメリットの一つです。
顧客情報の収集と蓄積ができる
DtoCは消費者がメーカーから直接商品を購入するので、自社のECサイトでの商品販売を基にして、消費者の性別や年齢、購入時間帯、購入商品などのユーザーデータを収集します。
ユーザーからの商品に関するフィードバックをダイレクトに取り入れられる点もメリットです。このデータを分析し、消費者のニーズや商品ターゲットを把握すれば、商品在庫を適切に調整したり、適時セールを実施できます。
ブランドイメージの発信ができる
DtoCはメーカーから直接ユーザーに情報を発信できるので、自社商品のブランドイメージを直接伝えられます。
また、ECモールでは、他社商品と一緒に陳列されるので、自社のブランドイメージは伝えにくいです。
しかし、独自性の高いECサイトの構築は他社との差別化につながりますし、卸売業者や小売店などの中間業者を通さずに自社単独で企画から販売までを行えば、ブランドのビジョンやコンセプトを顧客に伝えやすくなるでしょう。
顧客との関係強化
DtoCでは直接コンシューマーが商品を購入するので、ユーザーとの関係強化がしやすくなります。
商品に対する要望や不満なども拾いやすく、ユーザーの声をダイレクトに受け止められる点もDtoCのメリットです。小売店や量販店、ECモールでの販売とは違い、DtoCではSNSによるプロモーションでのブランドの認知から、商品の発送やアフターサービスまで、購買に関わる全ての段階で顧客との関係を構築できます。
DtoCのデメリット
既にお話ししたようにDtoCにも、もちろんデメリットはあります。主なデメリットは以下のような点です。
- 自社での集客が必要
- システム構築のコスト
- 実際に商品を手にできない
では、詳しく見ていきましょう。
自社での集客が必要
ECモールを利用しない場合は、主にSNSあるいは検索サイトでの指名検索が集客のためのメインのチャネルです。そのために、ブランドを認知されていない場合は、自社で広告を用いた集客が必要となります。
例えばInstagramでは、直接商品を購入できるリンクを設置することが可能で、しかも動画を優先して表示させるアルゴリズムになっているので、動画広告がとても有効です。
また、インフルエンサーを活用した販促活動では、インフルエンサーに実際に商品を使用してもらい、その感想を投稿してもらうのもトレンドになっています。
システム開発のコスト
以前と比較すると、ECサイト開発コストはかなり下がりましたが、それでも自社で満足する機能を導入すると、相応のコストがかかります。当然ランニングコストや運営担当者の手配も必要です。
今までに自社サイトでの販売をしたことがなく不安であれば、自社で開発する前にとりあえず「STORE.jp」や「BASE」のようなクラウドサービスでテスト販売して様子を見るのもよいでしょう。
実際に商品を手にできない
当然のことではありますが、DtoCはオンラインでの販売が主流です。そのため、ユーザーが実際に商品を手に取って確認するのは不可能な点もデメリットです。
ユーザーが商品をイメージしやすいようにSNSを活用するなどして商品の情報を細かに投稿したり、ポップアップショップの利用、動画を制作しイメージを湧きやすくするなどの工夫が必要です。
特にアパレルブランドの場合は、商品のサイズ・色・素材などを直接確認できないので、交換や返品のクレームまで考慮する必要があるでしょう。
DtoCで成功のポイント
DtoCを取り入れて成功するためには、具体的に何をすればいいのでしょうか。ここからは、日本の企業が今後ECサイトでDtoCを成功させるためのポイントを4つ見ていきます。
自社の商品力
まずDtocを考える前に、自社の商品について客観的に見る必要があります。
DtoCとは企業が顧客に直接販売チャネルを持つことなので、販売代理店のおすすめや、販売スタッフのセールストークは存在しません。そのために問われるのは商品力ということになります。逆説的にいうと圧倒的な商品やユニークな商品であれば、何もしなくても一般ユーザーがSNSで発信してくれます。
そのように考えると、企業のWebマーケティングは、商品を企画する段階から始まっていて、商品企画とWebマーケティングを分けて考えずに、顧客の視点から商品企画を練り込むことが重要になってきます。
自社のブランド力
今後DtoCを始めようと考えている企業は、ブランド力が高い企業ばかりではないでしょう。
SNSなどでマーケティングを実施する際に意識しなければならないのは、ブランド力の強化です。ブランドイメージを確立するために、顧客との接点をできるだけ増やし、一貫性のあるコンテンツを継続して発信することが重要です。
自社の企業理念やポリシーに共感してもらえれば、ユーザーとの距離はなくなっていきます。
Webマーケティングのノウハウ
中小規模の企業がDtoCを成功させようと考えた場合、ブログやSNSを活用したWebマーケティングで集客を成功させる必要があります。
しかし、どの企業も経験のあるWebマーケティング担当者は不足しているのが現状です。もちろん、企業側も担当者をアサインしますが、ほとんどの場合、社内の他部署で経験を積んだ社員で、Webマーケティングの知識が豊富ではありません。
そのような場合、広告代理店に依頼することになりますが、経験がないと広告代理店の選別も難しいのです。事前に自社で育てる、経験者をスカウトするなどの対策が必要となります。
SNSマーケティング
企業イメージの確立・拡散は重要なポイントで、InstagramやTwitterをはじめとするSNSの活用も有効な手段です。
企業イメージを画像や動画にメッセージを添えて視覚的に訴求するならInstagramが有効です。一方でTwitterは文字のみの投稿も可能なので、日々の活動やちょっとしたひと言などを投稿できますので消費者との距離が近いツールです。
どのような発信スタイルを目指すかと同時に、訴求したいターゲットの年齢層に合ったSNSを活用すれば効果はさらに高いものになるでしょう。
DtoCを活用した実践例
続いては、ECサイトでDtoCを取り入れ、マーケティングやキャンペーンによって成功した事例です。国内の事例と海外の事例を1つずつ紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
日本での事例|パルクオム社
「バルクオム(BALKHOMME)」は男性向けのスキンケアという従来なかった市場で、今までとは異なるマーケティングで成功したメンズコスメブランドです。
同社はあえてトレンドには乗らずにベーシックさを売りにし、SNSをメインにシンプルなパッケージを前面に押し出して、大手メーカーにはない独自のブランドを確立しました。有名芸能人を起用したブランディング型PRも得意で売上を順調に伸ばしています。
世界での事例|Glossier、inc
Glossier(グロッシアー)はニューヨーク発のコスメブランドで、月に140万PVあるファッション関係のブログの運営者が立ち上げたブランドです。フォロワーの声を生かしたコスメを販売して売り上げを急激に伸ばしてきました。商品力の高さもポイントといえます。
また、Instagramも活用し、自社のファンになってもらうべく、ユーザーのコメントにまめに返信するなどSNSマーケティングにも力を入れています。
まとめ
SNSが普及している現代では、DtoCは非常に効果的な販売システムといえます。ブランドイメージを効果的に発信したり、蓄積した顧客情報をマーケティングに活用できるのでDtoCはメリットが大きいのではないでしょうか。
国内においても、大企業はもちろん、スタートアップ企業がDtoCに取り組むこともあり、今後のEC業界の流行になっていくと考えられます。販路拡大や利益の増大を狙うメーカーは、DtoCに挑戦してみてはいかがでしょう。