コロナ渦での巣ごもりでネット需要が高まり、ECサイトに注目が集まっています。これを機にECサイトを立ち上げたいと考えても、どうやったらいいのか方法がわからない経営者もまだまだいるかと思われます。
この記事ではECサイトの構築方法の種類と手順の流れを解説し、さらに構築する際の注意点にも触れています。これからECサイトで事業を始める方への参考になれば幸いです。
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ECサイト構築方法の種類と費用の目安
ECサイトを構築する方法は5つあります。
企業の規模や自社にノウハウのある人材がいるかどうかでどの方法で構築するかを決めなければなりません。
また、ECサイト構築にかかる費用は、自社で開発する場合は開発人件費やハードウェアの購入費用、オープンソースを利用する場合は、カスタマイズやホスティング費用、ドメイン取得費用、プラグインなどの追加費用がかかる場合があります。
一方で、クラウドサービスを利用して構築する際に費用は、サブスクリプションベースで費用が発生するため、初期費用を抑えられます。全体的な費用は、ECサイトの規模や機能によって異なりますが、初期設備投資やランニングコストを考慮し、予算を立てることが大切です。
構築方法の種類と概要を解説します。
① フルスクラッチ型
1から全てのシステムを構築する方法です。
専門の知識やスキルも必要となりますので一番時間と費用がかかります。その代わり自社の特色を活かしたデザインとシステムを組み上げる事ができる為、オリジナルコンテンツとして差別化を図る事ができます。
コストが莫大になるため大企業が採用する方法といえます。
② パッケージ型
最初からカート機能・顧客管理・受注管理・売上管理といった運営・管理に必要な機能がそろっているショッピングカートシステムです。
必要な機能をさらにカスタマイズで追加することが出来ます。初期設定に含まれている機能のみで構築できる場合は、その分費用と時間を節約できるというメリットがあります。
大企業から新規の小さい企業まで幅広い層で採用されている方法です。
③ クラウドEC/SaaS型
クラウドECとは、クラウド上のプラットフォームを利用してECサイトを構築することができるものです。SaaSも同じ意味でクラウド上にあるサービスを必要な分だけ利用できるソフトウェアのことです。
他との違いは、自社にサーバーを用意してシステムを保管しないといけないのに対してクラウド上でサイトを保管・運営できるという点です。
ランニングコストが良くカスタマイズも自由にできるので、多くの企業から採用されている方法です。
④ オープンソース型
ECシステムのプログラムコードという内部構造が公開されており、知識がある人ならだれでも利用できる構築方法です。
無料で公開されているものもあるので初期コストがかからない場合もあります。
カスタマイズも知識次第で自由に拡張できますが、セキュリティ対策という点では情報漏洩というリスクは少なくなく、規模が拡張したり開発者が変わったりした際は全ての機能を把握することが難しくなるというデメリットがあります。
⑤ ASP型
Application Service Provider(アプリケーションサービスプロバイダー)の略称で、ネットを介して提供される様々なサービスのことを指します。
提供されている既存のサービスを利用する為管理の手間が省けます。自社で構築する工程も省けますので、初期コストや時間をかけることなくすぐに運用できる点も特徴です。さらに、ネットを介する為ソフトウェアをパソコンにインストールする必要がなくどこからでもシステムを使うことが出来ます。
注意点として、広くユーザーに使われることを前提にシステムが組まれているためカスタマイズはあまり自由が利きません。すでにある機能を使うしかないので、導入後に必要な機能がASPに無いといった事態にならないように注意が必要です。
提供しているサーバーが停止した場合はシステムを利用できない、共有サーバーを利用するため情報漏洩のリスクといった注意点はあります。
- ①フルスクラッチ型
- ②パッケージ型
- ③クラウドEC/SaaS型
- ④オープンソース型
- ⑤ASP型
ECサイトの構築手順を解説
ECサイトを実際に構築する場合、まず何から手を付けたらいいかイメージできない方も多いと思います。ここでは構築する際の大まかな流れを解説します。
構築方法の選び方
構築方法を選ぶ際には自社に合った方法を選ぶ必要があります。選ぶための判断基準は主に4つあります。
①コストパフォーマンスを考える
利用する際には多くの場合手数料といったコストがかかります。
構築方法毎にどの程度の初期費用がかかるのか、その後のランニングコストはいくらになるのかを比較できるようにして予算内のものを選びましょう。
②機能が充実しているか
自社に必要な機能がそろっているかも重要です。
ASP型は基本的な機能はそろっていますが独自性が無く、フルスクラッチ型やパッケージ型等は独自のサイトを構築しやすい特徴があります。
必要最低限の機能で良いのであればASP型は低コストで素早く導入できますが、事業規模の拡大等を想定して今後追加したい機能を検討する余地を残したい場合は自由度の高い他の構築方法を選択するほうが良いでしょう。
③セキュリティ対策は万全か
ECサイトにおいては個人情報漏洩などのデータの流出は避けたいところです。完璧なセキュリティは存在しませんが、顧客情報を取り扱うため可能な限り万全な対策は必要です。
主に気を付けつけたい面としてシステム面・サポート面・インフラ面などで具体的にどのような対策をするかはチェックする必要があります。
④サポート体制は整っているか
フルスクラッチ型は自社で行う為必須ではありませんが、その他の構築方法を採用する場合はサポート体制がどの程度充実しているか確認することも重要な要素です。
サポートの充実度は各サービスによって違いが出ます。自社にECサイト運営の為のノウハウが無い場合は構築から導入後までサポートできるサービスが望ましいです。
サポート体制が整っていても人材が少なく対応が遅れるといった可能性もあるので、サポート体制だけでなく対応の早さも調べる必要があります。
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- ①コストパフォーマンスを考える
- ②機能が充実しているか
- ③セキュリティ対策は万全か
- ④サポート体制は整っているか
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構築方法毎のECサイトの開発、立ち上げまでの手順
ECサイトを作る際にそれぞれの構築方法で手順が違います。自社にとってどの方法が良いのか判断する基準にもなるので、種類毎の特徴は把握しておくことをおすすめします。
前章で触れた構築方法毎の大まかな流れを解説します。
① フルスクラッチ型の手順
- サイトの目的・デザイン・必要な機能・予算・制作スケジュールを決める
- システム設計書を作成する
- システム開発とテストを行う
- 商品登録などの開業準備をする
- 開業
フルスクラッチ型は1から構築するため始めにサイトを作るまでの流れと必要なものを準備してから取り掛かります。自由度が高くカスタマイズで何でもできる反面、作業中に社内で認識のズレが生じる可能性があります。
現場での混乱を防ぐ為、構築の際には綿密な打ち合わせで情報の共有とスケジュールを立てることが重要となります。
② パッケージ型の手順
- 開発会社を決める
- サイトの目的・デザイン・必要な機能・予算・制作スケジュールを決める
- 設計/開発/デザインを行う
- テストで不具合などの確認を行う
- 商品登録などの開業準備をする
- 開業
パッケージ型もシステムから構築する為、流れはフルスクラッチ型と大きく変わりません。サイトを運営する為に必要な機能はなにかを構築前に具体的にできるかがポイントとなります。
最初にサイトの目的を明確にしておくと、この後の工程に意味や目的がはっきりしやすく一貫性のある制作スケジュールを組むことが出来ます。
③ クラウドEC型の手順
- 開発するプラットフォームを決める
- サイトの目的・デザイン・必要な機能・予算・制作スケジュールを決める
- 設計/開発/デザインを行う
- テストで不具合などの確認を行う
- 商品登録などの開業準備をする
- 開業
クラウド上でシステムを構築する以外はパッケージ型と手順に違いはありません。
④ オープンソース型の手順
- サイトの目的・デザイン・必要な機能・予算・制作スケジュールを決める
- 公開されているプログラムコードをダウンロードする
- 開発/デザインを行う
- テストでセキュリティ対策や不具合などの確認を行う
- 商品登録などの開業準備をする
- 開業
事前にテンプレートのようなプログラムコードがある分フルスクラッチ型より導入までの期間は短いですが、セキュリティ対策は万全にする必要があります。
テストで不具合が無いか入念に確認してから開業することをおすすめします。
⑤ASP型の手順
- サイトの目的・デザイン・必要な機能・予算・制作スケジュールを決める
- サイトのURLを決める
- 必要な機能をテンプレートの中から選ぶ
- 自社サイトの目的に合わせたデザイン・カスタマイズを行う
- テスト/不具合の確認を行う
- 商品登録などの開業準備をする
- 開業
ASP型はプラットフォームを決定すれば、あとは既存のシステムを選択するだけで構築できます。その際に自社サイトの目的に合ったものを決定し、サイトのコンセプトがブレないことが重要です。
次にURLを決めますが、世界に1つだけのドメインになりますが有料で購入する必要のある独自ドメインと無料で利用できる共有ドメインのどちらかを選択する必要があります。独自ドメインは企業サイトで使用されることが多く、共有ドメインはAmazon・楽天などのモール型やブログ運営などでよく使用されます。
費用や更新の手間はかかりますが、独自ドメインの方がセキュリティ対策としてSSLを導入しやすく、ノウハウがあればSEO効果の点でも有利といえます。
共有ドメインは無料で更新などの手間もかからないという点ではメリットがありますので、自社サイトの目的に合わせて選択することをおすすめします。
クレームの原因にもなる為、設定やデザインが終わったらテスト注文を行い円滑にシステムが動いているか確認をしましょう。
ECサイト構築時に押さえておきたいポイント
ECサイトの構築方法は理解できました。
ここでは構築した後に失敗しないために押さえておきたいポイントを構築する前と後とで解説します。
ECサイト構築前に押さえておきたいポイント①
① 目的と課題を明確にする
ECサイトを構築する際にはコンセプトは重要です。
具体的には「サイトの目的」「改善すべき課題」「売り上げ目標」の3つは明確にしたほうが良いでしょう。
サイトを構築する上でブレない軸を作る為にも目指すべきゴールに向かって逆算するように開発を進めると方向性を見失うことなく取り組めます。
- サイトの目的
- 改善すべき課題
- 売り上げ目標
② ECサイトのコンセプトに合ったデザイン・コンテンツか
コンセプトが固まったならサイトをどのような形にするのかを明確にしましょう。サイト全体の設計から商品ページの構成、デザイン等を決めてサイトに必要な機能を決めていくと円滑に作業できます。
③ 自社サイトの必要なシステムは整っているか
コンセプトとそれに合わせたデザインを設計できた後は、必要な機能を選択します。この場合、単品購入で売り上げを図るか定期購入を取り入れるかといったメインで取り扱う商品のイメージも参考にすると決めやすいです。
必要機能の他にもカートシステムや決済方法、配送方法も具体的にしていきます。
④ 開発スケジュールを立てているか
ECサイトを構築することは一日では難しい場合が多いです。
ASP型やノウハウのある技術者がいる場合はその限りではありませんが、ある程度システムを組むにはチーム体制を整えたりトラブルを見越した余裕のあるスケジュールを組んだりする必要があります。
間に合わなくてオープンが延期にならないように、サイトの開業日に合わせて開発が終わるよう社内で情報共有と綿密なスケジューリングを行いましょう。
⑤ 予算はいくらか
事業である以上予算内に開発し収支のバランスが崩れないようにすることも重要です。
予算内でどこまでサイトを充実させるかを決めないと売り上げがあっても収支が合わず赤字になる可能性がありますので、必ず予算を決めてからサイトを設計するように注意しましょう。
- ① 目的と課題を明確にする
- ② ECサイトのコンセプトに合ったデザイン・コンテンツか
- ③ 自社サイトの必要なシステムは整っているか
- ④ 開発スケジュールを立てているか
- ⑤ 予算はいくらか
ECサイト構築後に押さえておきたいポイント②
目の前の費用よりコストパフォーマンスを重視する
かかるコストよりもかけたコストから得られるリターンを意識することは重要です。
規模の小さい企業では、スモールビジネスから始めたいという心理が働き初期コストを重視してASP型を選択する場合が考えられます。この考え方自体は間違いではありませんが、落とし穴もあります。
コストを抑えることに注目しすぎて、肝心の自社サイトに必要な機能やイメージしたデザインが設計できない可能性が生じます。開発に着手した後に気付き泣く泣く妥協するも想定していたコンセプトに合わず、結果マイナスに働く可能性も考えられます。
コストとその後に期待できるリターンを意識しながら判断するようにしましょう。
自社の売り上げアップ又は業務の効率化に必要な機能がそろっているか
サイト運営は「売り上げを作るフロント機能」と「サイト運営を維持するバックオフィス機能」の2つで成り立っています。
バックオフィス機能を疎かにすると業務が煩雑化しマンパワーや時間が増えるリスクがあります。業務を効率的に運営しつつ売り上げに繋がるフロント機能を充実させないと、収支のバランスが合わず収益が想定よりも上がらない可能性があります。
効率的に運営できるかも意識して必要な機能を選択しましょう。
- 目の前の費用よりコストパフォーマンスを重視する
- 自社の売り上げアップ又は業務の効率化に必要な機能がそろっているか
ECサイト構築後に押さえておきたいポイント③
ECサイトは簡単に作れる!ただし集客は難しい
ECサイトの構築方法は年々多様化し、小規模事業者であってもASPなどを利用すれば手軽に導入できます。
実際、3分ほどで無料のECサイトを立ち上げることも可能です。
一方で、集客は一筋縄ではいかず、広告を活用するにしても商品単価が約3,000円という多くのECサイトでは広告費の負担が大きいのが現実です。
このため、中小規模のECサイトでは、予算をかけずに効果的な集客を図るためにInstagramなどのSNSやSEO施策が重要になります。
予算が限られている場合、自社でECサイトに集客するノウハウを磨き上げ、KPIを設定して実験的な施策を積極的に試みることが成功への近道です。
失敗から学びつつ、成功につながる戦略を常に調整していくことが重要です。
ECサイトの乗り換え・リニューアルする際に注意すること
ECサイトを構築した後の話になりますが、サイトを乗り換えたりリニューアルしたりする事も考えられます。
スムーズに移行できるように乗り換え時の注意点とリニューアル時の注意点を解説します。
ECサイト乗り換え時の注意点
① 顧客の会員IDとパスワード履歴が無効になる
乗り換えでシステムが変わると、既存ユーザーがブラウザに登録したサイトIDとパスワードが無効になります。よって、自動ログインで利用していたユーザーに再度ログインしてもらう必要が発生します。
これをきっかけにサイトを退会するユーザーも出てくる為、ユーザーが離れないように何らかの施策を考える必要があります。
② SEO設定の引継ぎは必須
今まで育てたURLを乗り換えで変えてしまうとSEOが弱くなりユーザーが減少する可能性があります。
SEOの設定を引き継げるように、リダイレクトで新しいURLに移動できる設定をしないと、せっかく訪問した見込み顧客を失う可能性がある為注意しましょう。
③ サイトのレイアウトを変えると端末によっては不便になる
見やすいデザインは使用する端末で変わります。
最近の需要に合わせてスマホ画面でも見やすいようにデザインを新しくした場合、今度はパソコン画面が使いづらくなる可能性があります。
スマホとパソコンとそれぞれ最適なサイトを用意するとリスク軽減に繋がります。
④ 乗り換えが終わるまでは旧サイト関係者との関係性を良好に保つ
乗り換えの最中ではデータの引継ぎ、ドメイン変更といった作業が残っています。
フルスクラッチ型でなくベンダーを介してサイトを運営している場合は、円滑に作業を進める為に乗り換え作業が終わるまで関係性を悪化させないように気を付けましょう。
⑤ 不測の事態に備え乗り換え前のシステムに戻せるように備えておく
乗り換え後に意図しない不具合が発生し急遽旧システムに戻す可能性が生じることがあります。乗り換えたら旧システムは用済みと考えずに不測の事態への備えとして復旧できる準備も進めておきましょう。
最悪の事態に備えるリスク管理も事業を行う上で重要です。
- ① 顧客の会員IDとパスワード履歴が無効になる
- ② SEO設定の引継ぎは必須
- ③ サイトのレイアウトを変えると端末によっては不便になる
- ④ 乗り換えが終わるまでは旧サイト関係者との関係性を良好に保つ
- ⑤ 不測の事態に備え乗り換え前のシステムに戻せるように備えておく
ECサイトリニューアル時の注意点
① リニューアルする目的をしっかりと持つ
ECサイトをリニューアルする場合は何のために行うのか明確にしましょう。
リニューアルする際に現状成果をあげているものは残し課題となっている点を改善するといった目的に応じて実行する事で、リニューアル後の変化を比較・検証することができます。
リニューアル後はIDとパスワードが無効になるといったデメリットへの対策も忘れずに備える必要もあります。間違っても何となく新しくすれば全て解決するといった大雑把な理由でリニューアルせず、目的・課題にあわせて計画的に行いましょう。
② 目的に対して必要な機能をそろえる
リニューアルする目的に対して必要な機能を具体的にしておきましょう。
現状を分析し目的・課題に対して有効な機能を社内で共有し、何のためにリニューアルするのか見失わないようにしないとまたサイトのリニューアルが必要になってしまいます。
きちんとした目的をもってリニューアルをすることで結果を振り返りさらに改善に繋げることが出来ます。
- ① 目的をしっかりと持つ
- ② 目的に対して必要な機能をそろえる
まとめ
ECサイトの構築は企業の規模や目的に合わせて考えることが重要です。
ノウハウが無いからとりあえずASP型を選択するといった判断をしてしまうと、目指していた事業が上手く行えない可能性があります。自社のスタイルに合った構築方法を選択し堅実な運営を目指しましょう。