アパレル業界注目の「D2C」とは?市場規模やデメリット・成功事例3選

2022/11/28

「D2C」という言葉を知っていますか?近年ビジネスシーンで耳にする機会が多くなった言葉ですが、意味やメリットなどをあまりわかっていない方も多いのではないでしょうか?

今後においても更に盛り上がりを見せるD2Cについて事例を交えながら解説していきます。自身のビジネスやブランドを成長させるポイントが眠っていると思いますので、是非参考にして下さい。

D2Cとは

「D2C」とは、「Direct to Consumer」の略で、ユーザーに商品やサービスを直接販売するビジネスモデルのことを指します。

一般的に企業が商品を販売するにあたって、小売店などの流通業者に商品を卸し、店舗に置かれることで消費者の手元に届きます。今回のD2Cモデルでは、自社のECサイトなどを通じて直接ユーザーと接点を持ち、そのまま販売まで行うという流れになります。

IT企業では、既に導入されているビジネスモデルですが、領域がアパレルブランドにまで及びその目新しさから今注目を集めています。

D2Cの市場規模

D2Cの市場規模ですが、マーケティング会社による調査では、2025年に約3兆円に及ぶと言われています。
今後もデジタル技術の発展やSNSなどのサービスがさらに波及していき、D2Cの親和性の高さから市場が広がっていくと予測されています。

また、コロナウイルスの世界的大流行により、非対面や非接触の需要が高まり、ウィズコロナのライフスタイルは引き続いていくことも市場の成長を加速させる要因となっています。

D2Cがアパレル業界で注目されている背景

D2Cが注目された背景について、以下2点についてそれぞれ見ていきましょう。

ライフスタイルの変化

大量生産・大量消費の流れから市場が成熟していき、且つ価値観の変化やライフスタイルの多様化によって、商品やサービスの価値が重要視されるようになってきました。

アパレルはブランドという「象徴」とコンセプトという「ライフスタイルの提示」が、現代の価値観重視のモノの見方に合致しており、ダイレクトにユーザーと関係性を構築できるD2Cが注目されたという背景があります。

また、アパレル商品は「消費」ではなく、「所有」に価値を見出すブランドが多いので、そのような部分もライフスタイルの変化と親和性の高さが伺えます。

SNSの発達

もう一方では、SNSが発達したことも要因として挙げられます。

現在、SNSのユーザー数は世界で46億人を突破し、国内でも8000万人を超え今後も伸びる見込みです。その中でも特にInstagramはアパレルブランドとシナジーがあり、写真や動画投稿に特化している点、ショッピング機能やカード決済機能も導入予定など今後のD2C市場を盛り上げる一因です。

Instagram内における国内企業アカウントも2014年は2000ほどだったのに対し、2016年では10000を超えるなど発展性を裏付けています。

D2CとSPAの相違点

よくアパレル業界において、「SPA」と言われるビジネスモデルがありD2Cとごっちゃになってしまうことがありますので、ここではその相違点について解説していきます。

SPAは「Speciality store retailer of Private label Apparel」の略で、自社で企画・生産した商品を直店舗で販売するビジネスモデルのことを指します。代表的なのが、ユニクロやGAPが挙げられます。

D2Cは、SPAと違いECサイト上で完結し、直店舗を持ちません。また、SPAはユーザーにいち早く商品を届けるという効率とスピードを武器にしていますが、D2Cは自社のブランドやコンセプトの価値に比重を置いています。この部分が2つのビジネスモデルの大きく違う点になります。

D2Cのメリット

D2Cのメリットにはいくつかありますが、ここでは以下3点について解説していきます。

ユーザーとの関係性の構築

従来と比べユーザーとの距離を近づけることが可能なため、よりダイレクトにコミュニケーションを取ることが出来ます。

フォローしたり、メールやLINEなどを活用したメッセージなど、双方向でやりとりを行うことが可能になります。ビジネスにおいて、最初の難所である「認知」のハードルが下がることはメリットと言えます。

また、ユーザーの声をダイレクトに吸い上げることが可能なので、商品開発やサービスの改善をスピード感を持って行えることが出来ます。

利益の拡大

消費者に直接届けるということは、従来と違い仲介業者が必要ありません。なのでマージンや手数料などのコストを支払う必要もありません。また、実店舗も持たないので、家賃や人件費も必要なくなります。

その分ECサイトを充実させたり、商品開発に投資ができますので、クオリティを上げることが出来ます。
そのような運営コストの低さも相まってD2Cモデルが盛り上がりを見せているという側面もあります。事実アメリカでは、起業の手段として用いられたりしています。

ブランドコンセプトの浸透

ユーザーにダイレクトに届けるという利点は、自社のブランドコンセプトをより直接的に届けることにも繋がります。

SNSを使った双方向のコミュニケーションを活用することで有効的に且つたくさんの人に波及することも出来ます。
アパレルブランドにとってのビジネスの成功は、どれだけコンセプトを理解してもらい、ブランドのファンになってもらうかが重要です。その結果、LTVを最大化することが生存戦略として必要になります。

D2Cのデメリット

ただ、メリットばかりではなくデメリットも存在します。それぞれのデメリットについて以下2点を解説していきます。

体制構築への投資

D2Cを始めるに当たり、ECサイトの立ち上げ、運営費などの初期費用が必要になります。

その他にも流通経路の構築や問い合わせ、サポート費用など間接的にコストが必要になります。ランニングコストは実店舗運営よりD2Cに分がありますが、初期費用に関してはあまり遜色がありませんので注意しましょう。
コストだけでなく、人的リソースや時間も同様に必要ですので、余裕を持って計画的に推し進めましょう。

結果がすぐに返ってこない

商品やブランドコンセプトをダイレクトに伝えることが出来るのが強みですが、浸透には時間が掛かります。

まず認知してもらうところから始まり、徐々に自社コンテンツや魅力を伝え続けることでファンを増やしていくことになります。なので一定の売上を上げるためには、短期的な結果を求めず中長期的な目線を持ちブランドコンセプトを知って貰う必要があります。

その代わりコアなファンを獲得できればLTVに期待出来ますので、辛抱強く魅力を発信し続けましょう。

D2Cを有効活用するポイント

それでは、D2Cを効果的に活用するポイント2点についてお伝えします。この2つをしっかり押さえておくことで成功する可能性を上げることが出来ます。

SNS周りの強化

メリット等でも述べてきましたが、SNSの活用は必須と言えます。
ユーザーと直でコミュニケーションを取れるサービスに特化しており、また商品販売の導線としての機能も果たしてくれます。

特にInstagramはブランドコンセプトを伝えるという点で魅力が伝えやすく、他にもアクティブユーザーがそのままターゲットとなる場合が多いので活用しない理由がないほどです。SNSは多数サービスが展開されていますので、自社にあったものを検討し使いこなすことが大事です。

コンセプトの確立

D2Cはダイレクトにブランドコンセプトを伝え、ファンを獲得していくことがビジネス成功に繋がります。

よって、自社のコンセプトをしっかりと固めて伝えることが前提となります。綿密にターゲットを想像し、自社の価値は何か、ターゲットが商品やサービスを得てどのようにライフスタイルに変化を起こすのか、ユーザーの生活まで想像してコンセプトを固めましょう。理解しやすいストーリーなどがあるとより伝わりやすくなるのでおすすめです。

D2Cアパレルブランドの成功事例3選

D2Cの概要についてお伝えしてきましたが、ここからは具体的な成功事例をご紹介します。よりイメージしやすくなると思いますので、是非参考にしてみて下さい。

レディース|CREDONA

CRENOAは、アパレルブランド「Ungrid」の店員を8年間務めた後インフルエンサーとなったURI氏がディレクターを務める女性向けファッションブランドです。

YURI氏は20~30代女性から圧倒的な支持を集め、フォロワーは5万人弱獲得されています。ブランドコンセプトは、「時代に左右されないタイムレスで日常に寄り添うエフォートレスなファッション」となっており、古着などから着想を得て、長く日常的に着ていられる愛される服作りを意識されています。

立ち上げ当初は一切広告費を掛けずに発足し、YURI氏のフォロワーを中心に初日で4000万円の売上を上げるなど驚異的なデビューを遂げています。

公式サイト:https://credona.jp/shop/default.aspx

レディース|kay me(ケイミー)

kay meはストレッチ素材のスーツやワンピースを展開する女性向けファッションブランドです。

90%のアイテムは東京の職人の手作業から作られており、そのこだわりを感じさせる生産方法となっています。コンセプトは、「働く女性が、エレガントなスタイルを叶えつつ楽でいられる服のブランドを」とのことで、コンセプトを体現した服は人気が高く支持されています。

働く女性の目線にたったサービスが展開されており、注目の「試着便」というサービスは、30万円分の服を無料で配送。事前に手持ちの服やアクセサリーと合わせることができ、購入するか返送するか選択できるという画期的な方法を取っています。行き届いた利便性の高さから、アパレルブランドの平均2倍のリピート率を獲得しています。

公式サイト:https://kayme.com/jp/

メンズ|FABLIC TOKYO

FABLIC TOKYOは、オーダーメイドのビジネスウェアを展開する男性向けファッションブランドです。

スーツ姿のビジネスマンにインタビューを行い、スーツに持つそれぞれの悩みを吸い上げ、そのギャップを埋めるべく発足したブランドになります。特徴的なのが、最初は実店舗にて採寸を行い、次からはそのデータを元にECサイトで注文することができます。そのほかにもCRMを活用し受注や発注処理を効率化するなど、事業拡大してもコストを最小限に抑える工夫をしています。

2019年には年商10億円を達成するなど、D2Cの成功事例として大きな注目を集めています。

公式サイト:https://fabric-tokyo.com/

まとめ

今回は、アパレルブランドが注目しているD2Cモデルについて解説してきました。

D2Cとは、ダイレクトに消費者に商品を届ける方法で従来のように仲介業者を挟まないビジネスモデルになります。その分、コストを抑えることができ、またブランドコンセプトを直接発信できるところにメリットがあります。ただ、ブランドの浸透には時間が掛かるので、中長期的な目線を持ち魅力的なコンテンツを作り続ける必要があります。

ただ、価値観の多様化やライフスタイルの変化からD2Cが持つ潜在的なメリットが取り上げられ、親和性が高いアパレル業界において注目されており、今後もさらに市場が拡大する見込みがされています。
既存のビジネスモデルに伸び代を感じていない人や変化を加えたい人にとって、一つの新たな考え方として参考になれば幸いです。