年々、市場規模が拡大しているEC業界ですが、近年は巣ごもり需要の増加にともない市場規模の拡大がペースを上げています。この流れは「Amazon」「楽天」などのECモールだけではなく、自社ECサイトにも及んでいます。
しかし、自社でのECサイトの運営に興味はあるけど、実際に作るのには不安があるという声をよく聞きます。実際にそのようなな方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、自社ECサイトを構築する方法とオープンまでの流れについて解説します。
自社ECサイトとモール型ECサイトの違い
ECサイトをオープンする際、最初の選択肢が、自社ECサイトを構築するのか、ECモールに出店するかという点です。この両者の大きな違いは、独自ドメインを取得するかと言うことです。
しかし、実際にサイトをオープンさせると費用や運用面などいくつもの細かい違いがあります。
モール型ECサイトとは
モール型ECサイトとは、インターネット上にあるショッピングモールのようなものです。複数のショップや企業が集まって商品の販売を行うWebサイトやアプリケーションのことを指します。
出店する側は、既存のECプラットフォームを利用して販売を始められるので、一からECサイトを作る必要はありません。そのため、サイトを制作するためのの専門的な知識がなくても始められます。
しかし、既存のフォームを使用するということはサイトのデザインに独自性が出せないので、他の店舗との差別化を図るのが難しいと考える人もいます。
Amazon
マーケットプレイス型のECサイトで、運営はアマゾンジャパン株式会社です。商品単位で出品が可能なので気軽に始められます。
各ショップは独自のページは持たず、アイテムごとに出品して商品を露出させる仕組みです。Amazonプライムなどのサービスの提供で顧客を確保できています。
現在、月間の利用者数は国内最大で、業界トップの集客力を誇ります。
楽天市場
楽天株式会社が創業した当時から行っているのがテナント型の「楽天市場」。2019年時点の店舗数は4万8000を超え、1カ月のPV数は約33億PVと集客力が素晴らしいです。
ただし、初回出店料と月額出店料のほかに、システムサービスや決済サービスを利用する際の料金が固定でかかります。また、税込3,980円以上の購入に対しては送料無料なので要注意です。
Yahooショッピング
Amazon、楽天市場に次ぐ国内三番目の規模のテナント型のモール型ECサイトが「Yahooショッピング」です。運営はファッション通販サイトのZOZOの買収や、LINEとの経営統合で話題になったヤフー株式会社です。
一定の条件をクリアした店舗のみが出店できます。顧客はPayPayと連携したサービスを受けられるPayPayモールを導入したのも、目新しい取り組みです。
2013年度より出店料および月額利用料が無料になったことに伴い出店数が激増しています。
モール型ECサイトのメリット
やはり最大のメリットは 、モール型ECサイトの知名度と出店の手軽さではないでしょうか。
そのほかにもメリットはあります。ここではモール型ECサイトのメリットを詳しく見ていきましょう。
知名度や信頼性があるので購買につながる
まず、膨大なトラフィックがあることがモール型ECサイトの大きなメリットです。どんなに素晴らしい商品を出品していても、顧客にサイトに来てもらわなければ商品は売れません。
また、大手と言われるモールに出店していれば、 顧客から見れば信頼されやすくなります。ショップ自体の知名度はまだ低くても、モール自体のブランドに信用があるので、ユーザーは安心感を持って購入できます。
レビューやモール内において評価が高まれば、相乗効果で売上を伸ばすことも可能です。
集客力がある
モール型自体の「認知度」は、 集客の際にも大きな力となってくれます。
大手のECモールでは、数千万単位の月間利用者が存在するのが強みです。例えば、まだ知名度のないショップが一般的に流通している商品をECサイトで販売したい場合は、モールでの出店の方が売れやすい場合があります。
また、モール全体で開催される定期的に行われる販促イベントも、新規ユーザーを集める良いきっかけになるでしょう。
手軽に出店できる
モール型ECサイトに出店する手続きは比較的簡単です。
商品情報を掲載するページや決済方法の選択などは、すでに用意されているテンプレートに沿って入力するスタイルで、 専門的なWeb制作スキルは必要ありません。
また、モールによるサポートがあるのも、企業やショップにとっては嬉しいポイントです。例えば、物流関連のサポートがあれば運営の負担も軽くなり、ビジネスがスムーズに進むでしょう。
モール型ECサイトのデメリット
ここまでモール型ECサイトの数々のメリットを見てきましたが、 もちろんメリットがあればデメリットもあります。ここからは、モール型ECサイトの3つのデメリットについて詳しく解説します。
競合が多く価格競争になりやすい
1つのモール型ECサイトの中に、同じ商品や似たような商品を扱っているショップがいわゆる「競合」が複数ある場合には差別化が難しく価格勝負になりがちです。そして最終的には 値下げ競争が起こりやすくなります。
値下げ競争が激しくなればなるほど利益率が下がってしまいます。同じような商品を扱っているライバル店が多ければ多いほど、自社のショップの存在が薄れて行ってしまうので注意が必要です。
手数料などの費用がかかる
モール型ECサイトで出店している場合は、さまざまなサポートがあり非常に助かります。
しかしその反面、月額利用料以外にも、ショッピングモールの付与ポイントやアフィリエイトなどの費用負担、メール配信などのオプションサービスの利用料などのコストが必要になります。
詳細はモール型ECサイトによって異なりますが、例えば 商品が全く売れなかったとしても、各種固定費は発生するので損益分岐点を見極めておきましょう。
ショップの個性が出しにくい
モール型ECサイト内では、デザインが統一されており、商品検索でもほかの店と一覧で出てきます。そのために、 ショップの個性が出しにくく、ショップを覚えてもらいにくいというというデメリットがあります。
また、ユーザーのデータはモール側が管理し、ショップ側が顧客データにアクセスすることはできません。データに基づく個々の施策をショップ側で行うのは不可能と言わざるを得ません。
自社ECサイトとは
買い物をする場合にネットショップを利用する方の割合は年々増加しています。すでに多くのネットショップがありますが、新規参入のネットショップもひっきりなしにオープンしています。
ECサイトの中でも、メーカーなどが独自にドメインをとってオープンするネットショップが自社ECサイトです。数年前までは、自社でECを立ち上げるのはシステムを一から立ち上げる、それは大変なことでした。多額の費用と優れたエンジニアが必要なので、中小企業は選べない選択肢でした。
しかし、現在では多様な構築手法があり、 中小規模の店舗でも容易でそれほど予算をかけずに自社ECをオープンできるようになっています。
自社ECサイトのメリット
独自ドメインを取得して自社でECサイトを運営すると、自分たちの思うような施策で運営できます。もちろんコストもかかりますが、 主体的に施策を実行できます。
それでは、どのようなメリットがあるのでしょう。1つずつ詳しく解説します。
ブランディングしやすい
自由度が高いカスタマイズのプラットフォームを使用すれば、その分サイトのデザインや機能を自分たちの使いやすい仕様で構築できます。独自ドメインやデザインを生かしてオリジナリティを出すことができるのも自社ECのメリットです。
既出のように、モール型の場合は店舗の独自色は出せません。商品のアピールや知ってもらうためにも、ブランディングしやすい自社ECサイトの方が、長い目で見ての売上につながっていくと考えられます。
データを活用できる
これはユーザーに会員登録をしてもらわなければ実現しませんが、ECサイトの注文にはユーザーの個人情報を紐づけられます。どのような属性(年齢・性別・住所)のユーザーが、どのページを経由して何を購入したかというデータが毎日蓄積されていきます。
この蓄積されたデータを商品開発やプロモーションに生かすことができるのです。また、Web広告を配信する際のターゲティングにも活用できます。
利益率が高い
モール型ECサイトに出店すると、そのECサイトによりますが、ある程度の手数料が引かれてしまいます。その点、自社ECサイトの場合は出店料や手数料などは発生しません。
ECサイトの構築が終われば、基本的にシステムの保守費くらいしかかかりません。売上から仕入れや人件費などを引いて残った利益をそのまま自社のものにできます。
順調に販売活動が継続できれば、長い目で見るとモール型ECサイトより多くの利益を出すことができます。
リピート率を向上させやすい
自社サイトは、「特定の商品を購入しなければならない」必要性がないと来店されることが少ないので、モール型ECサイトと比較して集客が難しいです。
しかし、自社サイトには「顧客名簿」があり、メルマガやDMを送れるので商品露出を増やして売上を伸ばすことができます。これは自社ECサイトならではの大きなメリットです
このように自社ECサイトでは顧客名簿を活用し、ユーザーとの関係性を強化し、吹き付き合いをすることによってリピーターになってもらえるのです。
自社ECサイトのデメリット
モール型ECサイトにはない数々のメリットがある自社ECサイトですが、もちろん「デメリット」も存在します。自社ECサイトには、どのようなデメリットがあるのか1つずつ見ていきましょう。
自社で集客しなければならない
ECサイトを立ち上げれば、何もしなくてもお客さんが集まるわけではありません。まずは、自分たちのサイトの存在を知ってもらうまでにある程度の時間がかかるということを覚悟する必要があります。
集客には Web広告やSEO対策、SNS施策などが効果的です。
ただし、これらには Webマーケティングの知識が必要になります。書籍やセミナーに出席して学ぶことも可能ですが、コンサルティング会社のサービスを利用して同時に知見を身につける方法もあります。
成果が現れるまでに時間がかかる
前項でもお話ししましたが、一から始める自社ECの構築では、 成果が現れるまでにある程度の時間がかかります。すぐに結果は出ません。
「サイト訪問者を増やす」「客単価のアップ」「リピーターを増やす」、この3点が売上を伸ばすポイントです。
「ECサイトの問題点を見つけて改善」「顧客との良い関係を築く」などが大切になります。戦略と数値目標を設定し、効果測定をしながら取り組んでいきましょう。
マーケティング施策に主体性が必要
モール型ECサイトの場合は、運営側が分析したデータを提供してくれたり、膨大な量の会員データを蓄積していたりとマーケティング面においては手厚いサポートを受けられます。
しかし自社ECサイトでは、売上を向上させるための施策は、もちろん自社で取り組む必要があります。ただ、サイトをオープンしたときに、 スキルが足らないと効率的に施策を回していくことは難しいでしょう。
このようなケースでは、コンサル企業にサポートを依頼するのも一つの手です。サイトオープン当初のみ、プロの手を借りて効果的な施策を講じるのもありです。
自社ECサイトの構築方法
自社ECサイトを構築するには以下のような選択肢があります。
- フルスクラッチ
- パッケージ
- オープンソース
- ASP
- クラウドEC
それぞれに違いがあるので、自社ECサイトのビジネス規模と予算に合わせて選択する必要があります。
フルスクラッチ
「フルスクラッチ」は、 何もない状態から完全にオリジナルのシステムを構築することを意味します。個別の店舗ではなく、「Shopify」などのECシステムやAmazonなどのECモール自体を開発する方も増えています。
このような場合は、何らかのECサービスを使うのではなく、コンピュータ言語を駆使して1から完全に作るフルスクラッチ開発になります。年商50億円以上の大規模なECサイトを作る際に向いている構築方法です。
パッケージ
「パッケージ」は、ECサイトに必要な機能をパッケージ化したシステムです。
パッケージには最初から顧客管理などをはじめとするECサイトに必要な機能がパッケージ化されており、パッケージを基本として自社独自のECサイトを構築できます。
システム会社がパッケージ化しているものがない場合にはカスタマイズして機能追加していきますので、最初からパッケージしている機能が充実していれば、構築に時間やコストがかからないことになります。
このようなことから、 年商規模が大きめなECサイトから小中規模まで幅広く使われています。
オープンソース
「オープンソース」とは、Web上で無償で公開されているソースコードのことです。このソースコードを自分でカスタマイズして、オリジナルのサイトやソフトウェアを作るものです。
このオープンソースは、ソースコードをカスタマイズして自分でサイトを構築するので、機能やデザインの制約が少ないというメリットがあります。独自の機能も実装できるので、オリジナリティの高いECサイトが構築できます。
ASP
「ASP」はApplication Service Providerの略で「ECサイトの仕組みをWeb上で利用させてもらえるものです。自分でソフトをインストールする必要もなく、ネット上で誰でも簡単にECサイトが始められます。
ショップのテンプレートが何種類か用意されており、店名や商品情報、写真を入力するとECサイトが構築されます。このように 初心者にも簡単に始められる仕組みになっていることが特徴です。
また、テンプレートを使わずに、コンピュータ言語を用いてオリジナルのショップを作ることも可能なので、初心者から上級者まで幅広いニーズにこたえることができます。
クラウドEC
「クラウドEC」は ASPとパッケージ、フルスクラッチのいいとこ取りをしたシステムといえます。
- ASPのようにクラウド環境でシステムが常時アップデートされる
- パッケージやフルスクラッチ同様に自社でフルカスタマイズできる
このようにカスタマイズができ、さらにシステムを常にアップデートできるシステムなので、システムの入れ替えという作業は発生しません。また、クラウドサービスですから当然自社でサーバーを用意する必要はありません。
ECサイトをオープンするまでの流れ
前項のように、ECサイトを構築する方法は複数あります。方法ごとに費用や特色が異なり、 用途にあった方法を選べばその魅力を最大限に引き出すことが可能です。
ここでは、それぞれの方法のオープンまでの流れを見ていきます。
ASPの場合
ASPサービスを利用してECサイトを構築する場合のオープンまでの流れは以下の通りです。
1.情報の設定
ショップ名やドメインなど基本情報の設定です。
サブドメインを利用するのか、独自ドメインを取得するのかなど、 今後長期に渡り関わってくることも多いので、慎重に判断していきましょう。
2.機能の設定
注文・配送関連やデザインテンプレートなど機能面の設定です。
デザインテンプレートは、サイトのコンセプト、ターゲットを考慮し、用意されているものの中からあっているものを選びましょう。
有料ASPの場合は、コーディングによって細かくデザインを変更できるものもあります。
3.商品の登録
商品の登録を済ませればオープンの準備は完了です。写真のパターンを増やしたり説明文を書いたりしてみてください。
オープンソースの場合
オープンソースを利用してECサイトを構築する場合のオープンまでの流れは以下の通りです。
1.サーバーの契約
まずはじめにサーバーを契約します。レンタルサーバーなら、費用や準備の手間が減らせます。
2.ソフトのダウンロード
オープンソースの公式サイトよりダウンロードできます。
3.インストール
上記のソフトをサーバーにインストールします。
4.情報の設定
ショップ名やドメイン、データベースの設定です。事前に検討していきましょう。
5.機能の設定
商品の表示方法の変更やサイトのデザインテンプレートのインストールなど機能面の設定です。どのような層をターゲットにするサイトなのか、よく考えて選びましょう。
6.商品登録
商品を登録します。写真や説明文にも力を入れましょう。オープンソースのECサイトは、いかにカスタマイズできるかが重要です。
パッケージ・ECクラウドの場合
パッケージ・ECクラウドを利用してECサイトを構築する場合のオープンまでの流れは以下の通りです。
1.開発会社選定
次のようなフローで進みます。開発会社の調査、選定方法、コンペ、決定、社内での承認
2.要件定義
業務フロー、サーバー会社、デザイン会社、決済方法、配送方法
3.進捗確認
定例会議などで進捗状況を確認します。
4.サイト運営・準備
メールフォーマット、データの移行、運用ルールの決定、保守監視会社の決定などです。
全てにおいて根拠や理由を持たせることによって、効率よくECサイトを運営できます。
自社ECサイトとモール型ECサイトの両方を運営
自社ECサイトとモール型ECサイトの2つとも運営するEC事業者も結構います。コストは2つ分かかるのは当然ですが、そのコストを売上で十分に賄える規模の会社ならば、2つのECサイトで売上を最大化できます。
また両方のサイトを運営することは、障害時のリスクの軽減につながります。仮に自社サイトにシステム障害があった場合、自社サイトのみの運営であれば復旧までの間、売上は0が続きます。
しかし、モール型ECサイトも運営していれば ダメージを最小限に抑えることが可能なのです。
まとめ
今回は、自社ECサイトとモール型ECサイトに関して解説しました。
自社ECサイトは自由度が高く、顧客情報なども手に入ります。一方モール型は自由度は低いですが、モール自体のブランド力で集客可能です。双方のメリットデメリットを知ったうえで、自社はどのような構築方法が良いのかイメージしてみてください。